学校と会社の違いって?現役管理職が教える11の違い⑦【皆勤賞はあり得ない】

この春、新社会人として新たな生活がスタートして、「学校と会社の違い」が分かってきましたか?

「そんなの当たり前!学校は勉強するところ、会社は仕事をするところ」という声が聞こえてきそうですが、ほんとにそれが全てでしょうか?

そこで新社会人になるあなたに「学校と会社11の違い」を、ひとつづつ11回に分けて現役中間管理職の僕が解説します。

このシリーズの目的は、新社会人になるあなたに学校と会社の違いを理解してもらい、仕事へのモチベーションアップにつなげたり、積極的に仕事に取り組んでもらうことです。なので、仕事や社会人の厳しさを強調するものではありません

また、ここで解説する11の違いは僕の体験に基づいているので、学校と会社の違いが分かっていると戸惑わずに社会人生活をスタートできます。

それでは全11回のタイトルと今回の内容です。

  1. サービスを提供する側へ
  2. 仕事の正解はひとつじゃない
  3. 時間割は自分で作る
  4. 同じことをしていない
  5. 直接勉強を強制されない
  6. 接する年代が幅広い
  7. 皆勤賞はあり得ない今回はココ
  8. すべて「お客様のため」
  9. 教わる側から教える側へ
  10. 報告・相談が重要
  11. 責任の範囲が違う

「サラリーマンに皆勤賞はあり得ない」

学生時代は「学校を休むな!」なんて言われてませんでしたか?

それがサラリーマンとして仕事を始めると、時々上司から「休暇を取りなさい」と言われることがあります。学校とは全く反対です。

上司が「休暇を取れ」と言うことは、ある意味業務命令のようなものです。上司が休めと言うんですから、皆勤賞にはなりえません。

上司はなぜ「休暇を取れ」と言うのでしょう?

その大きな理由のひとつに「労働基準法」があります。

その「労働基準法」を含めて、これからサラリーマンには皆勤賞があり得ない理由を詳しく説明します

皆勤賞とは?

まずは改めて皆勤賞について整理しておきます。

条件としては「指定された休日以外のすべて無遅刻、無早退、無欠席」。学生であれば土日祝祭日に加えて春・夏・冬休みを除いた日は全て出席し、遅刻も早退もないことです。

つまり学生でもサラリーマンでも「毎日真面目に出席(出勤)して、真面目に勉強(仕事)しましたね」と言うことをたたえるものです。

この記事を読んでるあなたも、もしかしたら皆勤賞をもらったことがあるかもしれませんね。ちなみに僕は高校3年間無遅刻無欠席で、卒業の時に皆勤賞をもらいました。学生時代に賞をもらったのは、それくらいだったと思いますが。

労働基準法における労働時間と休日

経営者、労働者、双方が守らなければならない法律のひとつに「労働基準法」があります。この「労働基準法」の中には、労働時間と休日に関する定めがあります。この2つは、「働き方改革」として2019年4月から罰則付きの規定が盛り込まれています。(ただし、中小企業は2020年4月から適用)

重要な部分なので、一つひとつ解説していきます。

労働基準法における労働時間

労働時間の上限は、労働基準法第32条で「1週間40時間、1日8時間」と定められています。ただし一定の条件を満たした場合、「1ヶ月を平均して週40時間(1か月単位の変形労働制)」や「1年間を平均して週40時間(1年単位の変形労働制)」とすることも認められています。

これらの労働時間は一般的に「法定労働時間」と言われています。

もし、この法定労働時間を超えて働いた場合、それは「法定時間外労働」つまり残業となります。

労働基準法における休日

休日についても労働基準法に定めがあります。労働基準法35条では「少なくても週1回の休日を与える」または「4週間で4日以上の休日を与える」ことが定められています。

この「週1回の休日」や「4週間で4日の休日」は一般的に「法定休日」と言われています。

労働基準法における労働時間の上限

労働基準法32条では「1日8時間、週40時間」の労働時間であったり、35条で「週1回以上の休日を与える」ことが定められていますが、実際には1日8時間以上働いたり休日出勤することがあります。なぜそれが可能なのでしょうか?

それは使用者(経営者)と労働者が労働基準法第36条の規定に基づき「時間外労働・休日労働協定(以下「36協定」)」を締結して、協定書を労働基準監督署長へ届け出ることによって、時間外労働や休日出勤が可能となるのです。

2019年3月までの上限は、大臣告示(行政指導)による上限である「月45時間、年360時間」までですが、上限を超えた時の罰則もなく特別条項を設けることで、実質的には上限なく時間外労働ができるものでした。

改正労働基準法とは

2019年4月から働き方改革の一環として、労働基準法が改正されました。その主な内容は「時間外労働の上限規制と罰則」「年5日の年次有給休暇取得の義務化と罰則」と言う、罰則を伴うものとなりました。

こちらもひとつずつ説明します。

時間外労働の上限規制と罰則

時間外労働の上限が明確になりました。

原則として週45時間、年360時間が上限(臨時的な特別な事情があって労使が合意した場合(特別条項)は超えることができる)

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」より

ただし、臨時的な特別な事情があって労使が合意した場合でも、以下を守らなければなりません。

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
  • 上記に違反した場合には、罰則が科されるおそれがあります。
  • ただし、中小企業への適用は1年間猶予され、2020年4月1日から適用となる。

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」より

つまり、特別な事情があって労使が合意しても越えられない時間外労働の上限が設定され、それを超えると罰則として懲役や罰金が科されるのです。

年5日の年次有給休暇取得の義務化と罰則

こちらも時間外労働と同じく、2019年4月から法律が改正されています。その内容は次のようなものです。

  • 年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象
  • 使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
  • 使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
  • 休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるため、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。
  • 違反した場合には罰則が科されることがあります。

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説」より

つまり、有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、使用者は年5日必ず有給休暇を取得させなければならず、使用者による時期指定をする場合は就業規則に記載しなければならい、これらをに違反すると罰則が科せられると言うことです。

罰則の内容

では、罰則の内容を見てみましょう。

違反内容罰則内容
時間外労働の上限超過6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合(※)30万円以下の罰金
使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合30万円以下の罰金
労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合(※)6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

この表は厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が作成した「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」と「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」から抜粋したものです。 (※)のついた罰則による違反は、対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われます。

決して軽い処罰ではありません

就業規則での取り決め

会社で働く場合、会社ごとに就業規則があります。

就業規則では、出社時間から退社時間や休憩時間など仕事をするうえで必要なことが取り決められています。

もちろん労働基準法で定められている休日や休暇・労働時間についても決まっていて、社員は就業規則に従って働いているわけです。

あなた自身もそうですが、上司には上司自身だけではなく部下も就業規則に違反しないようにマネジメントする義務があります。

部下の体調管理

労働者の過重労働・メンタルヘルス対策として、2015年からストレスチェック制度が施行されています。その概要は

ストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的としたものです。平成27年12月に施行されました。

厚生労働省HP「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」より

この制度では本人の気づきを促すものですが、職場環境の改善につなげるには部下をマネジメントする上司が、仕事だけではなく心身を含めた部下の体調にも気を配らなければなりません。

まとめ「労働基準法上、サラリーマンに皆勤賞はあり得ない」

どうでしたか?どう頑張っても、サラリーマンが皆勤賞をとることができない理由が分かったでしょうか。

働き方改革によって、労働基準法上サラリーマンは必ず有給休暇を年間5日取得することが義務付けられています。

そして昭和や平成の前半とは違い、現在では残業や休日出勤など長時間労働が美徳とされていた社会ではなくなりつつあります。

いくら仕事が大好きで楽しくても、自分の体調や家族との時間、法律違反をしてまで皆勤賞を取る必要はありません。(皆勤賞がある会社なんて、あるのかどうか分かりませんが)

学校とは違い平日全て出勤することに価値はありません。休むべき時は、しっかり休みましょう。

ただし、無断欠勤や周りに過度な迷惑をかけないよう、休む前には事前準備や手続きをしっかり済ませておきましょう。

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