部下育成は管理職の仕事、なら管理職教育は誰の仕事

この記事を読んでいるあなたは、部下育成で悩んでいる管理職ではありませんか。管理職の仕事のひとつに部下の育成がありますが、思うように部下が成長せず職場全体のパフォーマンスが伸び悩むことがあると思います。そんな状況を改善したいと考えたとき、良い考えが浮かばず「自分に管理職としての能力が足りなくて、今の状況になっているのではないのか」と、原因を自分に求めてしまうことがありませんか。

でも、ちょっと待ってください。部下が成長しないのは、あなただけの責任でしょうか。管理職としての能力が足りないと感じるのは、あなただけの責任なのでしょうか。

部下の成長や職場運営に行き詰まり、自分の能力不足ではないかと思い悩んでいるあなたの気持ちが少しでも軽くなるよう、部下の育成と管理職への教育について、一緒に考えてみましょう。

管理職の仕事とは

まずは管理職の仕事を整理しておきましょう。

第一に職場のリーダーとして、会社の経営方針などをもとに現場で向かうべき目標を定めて、限りある労力で大きな成果を上げることです。

第二に部下の人事考課をしなければなりません。部下が1年間取り組んできたこととその成果などを適正に評価し、それに見合った給与や待遇となるよう経営層に報告しなければなりません。

第三に部下の育成をしなければなりません。誰でも新入社員の時は仕事の仕方が分かりません。そんな新入社員が一人前になるよう、教育の機会を与えたり指導役をつけて実務教育をしたり、時には自ら仕事をやって見せるなどして、部下の早期育成を任されています。

ここでは部下育成を三番目に挙げましたが、新入社員をはじめとした部下の能力が向上することで、職場全体のパフォーマンスが向上し、結果として少ない労力で大きな成果が得られるようになります。反対に、部下をうまく育成できなければ、本来仕事へ向けられるべき労力が部下育成へ向けられる割合が増えることとなったり、職場内では教育への負担感の増大から本来業務の効率の低下などで、大きな成果を上げられなくなってしまいます。

部下育成は、どのようになされているか

ここでは分かりやすく、部下育成として新入社員の場合を例にお話しします。

新入社員教育は、会社の規模や職種によって千差万別だと思いますが、大部分で共通していると思われるのは、入社後すぐに行われる社会人教育ではないでしょうか。最初の1~2週間で社会人として必要なビジネスマナー全般について教育を受けます。いわゆる言葉遣いや電話対応・名刺交換の仕方など、多くの仕事で必要と思われることです。

この社会人教育を経て、いよいよ職場に配属されての職場内教育(OJT:オン・ザ・ジョブトレーニング)が始まります。どれだけの期間を教育期間として設定するかは会社や職種により違いますが、この教育期間は職場の先輩社員が教育指導担当になり、実務を通して仕事に必要な知識や技術を教えていきます。また、職場を離れた研修会などの場で、必要なスキルを集中的に教わることがあったり、教育体系が整備されている場合は、どの時期にどんなことを教えるかが、ある程度決められていたりすることもあります。

このように見ていくと、新入社員教育は教わる側が全くの素人であるため、丁寧に教わることができるシステムになっていて、その内容は現場レベルでの実務処理に重きを置かれることが多いでしょう。

管理職として必要な能力は

次に職場の上司である管理職の僕たちに必要な能力を考えてみましょう。

管理職に必要な能力は、管理職以前とは異なるものになります。実務処理ももちろん大事ですが、現場第一線を部下に任せて一歩下がった場所で部下たちに仕事をさせて成果を出すことが求められます。

そこで一番重要だと僕が考えるのは、人間やものを観察する力「観察力」だと思います。

現場の第一線から離れるということは、必然的にデスクワークが多くなると思います。管理職になりたての頃は特にそうですが、部下や他部署からの報告書類の確認やパソコンでの書類作成、各種会議への出席など周りに目を向ける時間がなくなります。そういう日々が続くと、それが管理職の仕事だと思ってしまいなす。

けれど、そうではないと僕は考えています。

前々項で整理した通り、管理職の仕事は「限りある労力で大きな成果を上げること」とそれに必要な「部下育成」、そして部下の成果に対する「人事考課」です。

確かに報告書類の確認や会議も大事ではあります。特に部下からの報告書は仕事に対する成果物なので人事考課に反映すべきものです。けれど、それにばかり目が行っていると、部下がどんな風に仕事に取り組んでいるか、仕事の分担は適材適所か、困っていることはないかなど、いろんなことを見逃してしまいます。

部下に仕事を与えてその結果を評価するのが管理職の仕事です。誰にどんな仕事を任せることが最大の成果につながるのか、その部下の成長につながるのか、分担は適材適所かなどは、普段の様子をよく見ていないと判断を下すことはできません。仕事の結果については不確定要素が多いので最後まで分かりませんが、普段の様子を観察することで評価すべき点や改善点、意欲や力量などを把握することができて、適正な人事考課につながります。

もし、部下の様子が観察できていなければ、実際とはかけ離れた人事考課となり、本人や部下の納得感が得られず職場全体の雰囲気やモチベーションに影響が出てくることでしょう。最終的には職場のパフォーマンスが低下して、会社に損失を与えることになりかねません。また、その様な評価を下した管理職である私やあなたの力量も問われることになるでしょう。

管理職になるための教育をされてきたのか

管理職になるには、それまでの仕事が認められる必要があります。その上で昇進試験で合格しなければならない会社もあるでしょう。どちらにしても、大前提として担当としての仕事で重ねてきた実績をもとに管理職になります。

けれど、それは管理職としての能力のがあると認められたわけでは必ずしもないと思います。そのため、僕は管理職になりたての頃に、何をどうしたらよいのか長く悩むことになりました。これを読んでいるあなたも悩んでいるのでしょう。

では、なぜ管理職になると仕事の進め方で悩んでしまうのでしょうか。それは、管理職になるために必要なスキルを、管理職になる前に教育されてこなかったことが原因であると思います。

管理職に必要とされるスキルを教える研修はいろいろあります。けれど、それらの教育をあなたはいつの時点で受けましたか。僕の場合は、初めて管理職になってから半年くらい経ってからでした。そのため、最初の半年は何をどうしたものか手探りで進めて、周りに迷惑をかけていたと思います。

もしこれが、管理職になる半年前に研修を受けていてとしたら、どうなるでしょう。メリットとしては、研修後の半年間で自分でシミュレートすることができたり、心の準備ができたりすると思います。デメリットは、研修を受けても管理職になれなかった場合、管理職になれると思っていたのになれずモチベーションが下がってしまうことがも考えられます。

メリットとデメリットどちらもありますが、管理職研修は受講したからと言って即管理職になるわけではないことをアナウンスしたうえで、管理職になる前に受講できるべきだと僕は考えています。

現状の管理職教育講師は部下である

管理職になってからでないと管理職研修を受講できないという現状を踏まえると、管理職教育はOJTですすめるしか手はありません。けれど、その時新入社員教育のような職場の指導役のような存在はいません。自分の職場には管理職は自分しかいないので、必然的に管理職の仕事を教えられる人を求める場合は、外部に求めることになります。けれど、それは現実的ではないので、ものの見方を変えてみるのが一つの方法です。

部下は毎日、色々な課題を持ってきてくれます。それは小さなことから会社の利益に直結することまで様々です。それらに対して、どう処理するかが管理職としての勉強になります。

部下の行動特性が分かっていれば、仕事の抜け漏れが出そうな箇所が予測できたり、忙しそうな部下には声をかけてフォローやバックアップをしたり、大きなトラブルに見舞われた時には広い視野で事象を見直してみたり、意識・無意識を問わずやっていることを意識してやってみましょう。そうすることで、必要なことが身についてくると思います。

この様に考えると、普通は問題を持ってこない部下はいい部下ですが、管理職であるあなたを育てる講師としては物足りないことになります。反対に、いつも問題を持ち込んでくる部下は普通だと仕事ができないというレッテルを張られますが、管理職育成係としては問題解決能力を伸ばしてくれる良き講師であると言えるでしょう。

管理職教育のあるべき姿とは

日本の多くの企業で成果主義が広がっていますが、まだ年功序列の要素が色濃く残っているところもあります。そんな現在の環境では、管理職としての能力があってその立場に就く人と、会社での経験年数とそれまでの評価で管理職になる人が混在していると思います。

どちらのタイプも管理職になった当初は、それまでとは仕事の進め方も考え方も変えざるを得ません。その時に、管理職となった人も職場自体も混乱して業務に支障が出ないようにするのが一番重要なことだと思います。

そのためには、管理職と言うポジションに近づきつつある人たちには、それなりの意識付けと一緒に必要なスキルを勉強する機会を作るべきだと思います。もちろん、この教育を受ける人たちが勘違いして、すぐにでも管理職になると思わないように配慮する必要があると思いますが、管理職が何をしなければならないか分からないまま管理職になるより、はるかに良いと思います。

まとめ

会社に入ったばかりの新入社員と同じで、新しく管理職になった人には相応の教育が必要です。その反面、職場には管理職について教えることができる人は基本的にはいません。

そんな時に、管理職としてどうしたらよいのか、今までのポジションとのギャップ、部下との人間関係などを誰にも相談できずに思い悩み、身体的・精神的な病気にならないとも限りません。

それを考えると、ある程度の年齢や職場の人員構成を踏まえて、次期管理職候補には事前に教育をすることが必要だと改めて感じています。

それでは、この辺で。

関連記事

中間管理職になると、自分の個人的な仕事だけじゃなく職場全体のマネジメントが必要になります。そんな時のヒントになりそうな話はこちらです。 【新管理職必見!】新米管理職が最初にやるべきことは、「人を知る」こと 【新人管理[…]

中間管理職の働き方もくじ

⇩シェアしてもらえると、励みになります。

管理職のなやみ
最新情報をチェックしよう!